まず最初に、カスタマー・データ・プラットフォーム(別称顧客データプラットフォーム)を書こうと思います。
そもそもこの横文字続きの単語、検索してみると大体カスタマー・データ・プラットフォームを売っている会社が、それが何かを説明している記事ばかりで、実際使ってみてどうだったか、何に使えるのか、どんなチームや人が必要なのか、時間やお金はどれくらいかかるのか、実際にCDPを使うユーザー目線に合った実践的な記事が、実はあまりありません。
しかし、顧客データを元にしたマーケティング戦略、オペレーションの効率向上、等を目指している方には、とってもパワフルなツールであることに間違いありません。
そこで、CDPの用途、そしてハウツーを中心に纏めてみたいと思います。内容が盛りだくさんになりやすいので、ここでは広く浅めに、そして具体的な内容はそれぞれ違うページとして書く予定です。
CDPとは
CDPを活用する上でポイントとなるのが、CDP内に顧客データを取り入れ、必要に応じて整理整頓し、CDP外の顧客データを活用するプラットフォームに出して活用する、という点です。
CDPとは文字通り、顧客データを一つのプラットフォームに纏めたものです。CRMと違う点は、Web、デジタル広告を含む「全ての顧客データ」。そしてDMPと違う点は、3rd party cookieではなく、1st party cookieを使ったデータという事です。これらのデータを入れます。
そして、顧客分析したり、マーケティング戦略をしたり、より良い営業やカスタマーサービスができるように、それぞれのプラットフォームに出します。
CDPとは、と検索すると沢山情報があるので、ここではこれ位で割愛します。
用途
顧客データの一元化
- CRMには顧客データとして個人情報の他に、購買履歴、そしてカスタマーサポートのデータ(通話履歴等)もあったりしますよね。でもどのマーケティングチャネルから来たか(検索エンジンから来たのか、フェイスブック広告から来たのか)、そして複数のチャネルを行き来して最初の購買に繋がったのか、はたまた2度目、3度目の購買となったのか、デジタルデータも見えたら、顧客をより理解でき、マーケティングやサービス向上に活かせるのに、と思いませんか?そこで、複数のプラットフォームを融合して、全てのデータをできる限り1つの所に集めて一元化しよう、となったのがCDPです。
- さて、実際1人の顧客データが全てこのCDPに集まるのかというと、そうではありません。これは「データを集める為のIDが存在しているか否か」によるからです。ここで言うIDは、様々のデータを、これはAさんがしたことだよね、いやいやこれはBさんがしたことだよ、と「人」として認識する為のIDです。複数のアルファベットと数字を掛け合わせたようなIDなので、個人を特定する事はできません。そして携帯でしたこととパソコンでしたことを様々な用法でくっつけてAさんと特定することはできても、テレビの広告を見た時(オン・デマンドの広告を除く)、又は屋外広告を見た時など、IDが全く取れないような場合は、勿論顧客データとして残らず、データを顧客と紐づけることはできません。
- それでも、デジタル化がどんどん進む中で、クッキーを含め個人がしたことの「跡」となるものが何かしら残るケースが増えています。なので、それらのデータをできる限り拾い集め、1箇所に纏めて、顧客データとして分析、そして応用しましょうよ、というのがCDPの主な目的です。
- 実際にどうCDPを用いてするのか、というのは、また別のページで書きます。
顧客のスコアリング&顧客生涯価値(Life Time Value)
- さて、顧客データを集めれば集めるほど、企業側の費用対効果的に「良かったケース」と「悪かったケース」というのが見えてきます。例えば、フェイスブック広告を見た後クリックしてウェブサイトですぐに購買し、商品を気に入り、長くロイヤルカスタマーとして何度もリピートしてくれた場合は、非常に良いケースですよね。かけたコストの割には、顧客生涯価値が高くなった場合のことを指します。逆に、何度も何度も広告してやっと購買してくれたのに、それ以降全然リピートしてくれなくなった場合、顧客生涯価値が低い場合は、費用対効果の面で、悪いケースになります。また、カスタマーサービスの点で言うと、数回のメールで、目的に達した場合が良いケース、逆に何度も電話で対応したにも関わらず、目的に達しなかった場合が悪いケースになります。この良かったケース、悪かったケースを総合的に見えるようにし、分析し、今後のマーケティングやオペレーションに活かせるようにするのが、CDPの用途の一つです。
CDPを用いたマーケティング
- 上記に書いたスコアリングや顧客生涯価値を元に、「戦略的なマーケティング」をできるだけ「自動化」するのが、CDPの用途としてあります。
- CDPを用いた「戦略的なマーケティング」について例を交えてみます。
- まず、子供用品を売っている会社があったとします。そして出している広告として、ディスプレイ広告、メタ広告、検索連動型広告があったとします。顧客データを一箇所に集めたことにより、一番購買に繋がり、費用対効果の高いマーケティングが、メタ広告を見た後の検索連動型広告を見た場合とわかったとします。メタ内(Meta Ads Manager)や連動型広告内(Google Ads等)、ではわからなかったことが、CDP内で複数のプラットフィームからデータを一箇所に集めたことにより、分析できるようになるのです。
- 他にも、この子供用品を売っている会社が、広告費削減の為にも、ロイヤルカスタマーを増やしたい、と考えているとします。売っている商品、そして広告に、子供用の洋服、靴、カッパがあったとします。最初にカッパの広告を見て、ウェブサイト上で商品を買うお客様は、最初に洋服を見て、ウェブサイト上で商品を買うお客様よりも、何度もリピートしてくれるロイヤルカスタマーとなりやすいことが、マーケティングとCRMのデータを両方集めて見たことにより、分析できるようになるのです。次のキャンペーンでは、カッパの広告を増やし、より長く買ってくれるロイヤルカスタマーを増やそう、と練ることができますよね。
- また、これらのマーケティングの手法を、広告を運営するプラットフォームと繋げることによって、より費用対効果の高いマーケティングへと自動化を目指すことができます。例えば、CRM内にある日々更新される既存顧客リストを元に、既存顧客を除いた新規顧客用マーケティングにしたり(これ、結構なコスト削減になります)、プラットフォーム内に随時類似オーディエンスを作り、それらに広告を出すことにより、より購買に繋がるマーケティングが行えたりします。
CDPを用いた営業&カスタマーサポート
- 企業が何か大きい商品(大型機械等)、または複雑な商品(保険等)を売っている場合、お問い合わせフォームをウェブサイト上に設け、見込み顧客のリードを獲得&ナーチャリングする場合があります。その際、メールや電話で商品の詳しい情報の案内をしたりします。企業からすると、コストがかからないのがメール、そしてコストがかかるのが電話案内ですよね。勿論、最終的に購買と繋がるのは実際に人と話し、安心しやすい電話です。それでは、「一番購買してくれそうな見込み顧客」を優先して、電話案内できるようにしたい、と思いませんか?CDPでは、複数のプラットフォームの行動データを元に作った顧客のスコアリングを作ることができるので、それを社内システムに繋げて、これを実現することができるのです。例えば、最近リード用に送信したメールよりウェブサイト内に何度も訪れている人を中心に、随時Top10を作り、電話案内をする、という具合です。
同意管理のガバナンス
- GDPRの影響より、日本でもクッキーの同意を聞くウェブサイトが増えてきました。ここで確認した同意する&しないを、CDPではウェブサイトを含む複数のマーケティングプラットフォームに繋がっているので、全般に随時適応できるようにしましょう、となったのが、CDPの用途の一つとしてあります。金融機関など、業種上これが絶対マストなので、とこの用途のみの理由でCDPを導入する企業もいるほどです。
誰が使うのか
数々のCDP関連のイベントを通してCDPのユーザーを見ると、CDPの安くはないプラットフォームであることから、大手企業が8〜9割、中小企業が1〜2割といった割合でした。CDPの金額、そして導入と導入後の運営に必要なスキルというと、大手企業に集まりやすい。ただ、小さい会社であっても必要なスキルを網羅していたら、CDPを活用することはできます。実際、私がCDPを毎日のように使っていたのは、会社員50人未満のスタートアップでした。業界でいうと、銀行、保険会社、航空会社、そしてEコマースを中心としたユーザーが多いです。
そして社内では誰が使うのか。CDPを何目的として導入したのか、用途によると思うのですが、マーケティング、営業、カスタマーサポートが主なユーザーになる場合が多いと思います。そして実際にどれ位コスト削減や費用対効果向上に繋がっているのか、計測する為にデータ分析がユーザーと加わる場合もあります。そしてそれを用いて経営の判断をする経営チームが関わってくると思います。
必要なチーム、お金、時間
必要なスキル
- 必要なスキルより複数のプラットフォームをCDPに繋げ、より顧客データを集め、分析し、マーケティングやオペレーションに活かす、という点から、以下のようなスキルが考えられます。勿論それぞれのCDPプロバイダーに技術面やプロジェクトマネージメント面でサポートしてくれるチームがいるのですが、外部のサポートチームのみに頼ると、お金も時間も大分かかるのが現実です。そして沢山お金と時間をかけたのに、出来上がっていざ使うぞとなった段階で全然使えたもんじゃない、なんて事を避ける為にも、以下のスキルを社内でCDPを、導入前の段階で確保することをお勧めします。
お金
- CDPの導入とツール費用:最低数百万円。繋げるプラットフォームの数やデータにより、値段が変わります。
- CDPの運営:年間数百万円(月額数十万円)。社内のコアユーザー以外にも、技術的なサポートが必要となった際、サポート費が加わります。
時間
- CDPの導入:現実的に最低3ヶ月位は必須です。内訳としては、下記になります。
- 導入目的となる3つ位ユースケースを決める(数週間)。例えば、〇〇と◆◆のデータを元にして顧客スコアリングして、カスタマーサポートチームに毎日トップ10をエクセルか何かで毎日共有する、等。
- 社内サポートチームを決める(数週間)
- CDPプロバイダーと導入を実行。CRMデータポイントを繋げたり、それぞれのマーケティングプラットフォームを繋げたり、等。(1ヶ月〜2ヶ月)
- CDP導入後の運営:導入がゴールではありません。その後、日々使えるようにする為に以下のようなことが挙げられます。CDPコアユーザーを中心に、週数時間は確保する必要があるかと思います。
- CDPプロバイダーと定期的に行われるミーティング。何か困っている点はないか、どんなサポートが必要か、話し合います。(月数時間程度)
- CDPの導入後に実際使ってみて、〜のデータがあったら良いのにな、〜を自動化できると便利、とアイデアは、どうしても出てくると思います。簡単にできるものは、その際解決して使いやすくします。前の例で言うと、トップ10をあげる上で、電話番号だけでなくメールアドレスやリード歴を同時にリストに出す、等です。(月数時間程度)
- 逆に複雑で色んなチームと取り組む必要がある場合は、プロジェクトとして新たにリソースを確保する必要があります。前の例で言うと、トップ10をあげるだけでにはなく、彼らにメールを自動的に出せるようにする、等です。メールプラットフォームを繋げ、トップ10となる方のメールアドレスがそのメールプラットフォームに流れるようにし、自動的にメールを送れるようにする、等の作業が出て来る為です。(月数十時間程度)